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名古屋大学情報学部

スペシャルインタビュー

インタビューイメージ

私たちの研究は、いつ使われるか、役に立つかわからない
でも、企業からの卒業生の評価は高いですよ

酒井 正彦 教授

【所属】大学院情報学研究科 情報システム学専攻
【担当】情報学部 コンピュータ科学科

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基礎から応用まですべてを理解できる、底力がつくステキな学部

-酒井先生の研究はどのようなものですか?

いかにしてバグのないプログラムを作るのか これを目指して、プログラムの基礎理論の研究を進めてます。理系の学問というのは積み上げで、特に基礎理論だと出た結果がいつ使われるか、役に立つかわからない。50年先かもしれないし、全然使われないかもしれないというものです。もちろん、いつか使われるよう頑張っていますが。でも、どうせ使われるか分からないなら、興味がわくことをやっています。

私達の学科はまさに理系のど真ん中を行く部門で、講義は難しいですよ。でも、ソフトウェアだけではなく、周辺のことも網羅し理解できるというステキな学部です。学生が卒業した後に「よかった!」と思えるような基礎力や技術を身につけさせたいと思っています。最先端のものばかりを追いかけてもすぐに古くなるから、卒業後に自分でずっと追い続けられる底力を育てたいですね。論理的に考えられる人は、いろんなところで活躍しています。酒井研究室の卒業生は企業からの評価はとても高いですよ。

「数学」をすきであること、やりたいことをやる意識

-どんな知識、意識を持っておく必要がありますか?

数学の知識、離散的な数学が必要です。高校で習うものは連続的な数学で、微分積分など嫌な思いをしている人もいるでしょうね。離散数学というのは、高校の数学でいえば、集合の分野の延長のようなものです。高校では学んでいないことばかりの知識を使いますが、普通に数学をすきで勉強してくれていれば良いです。あ、数学とは関係ないけど、たまに全然文章が書けない人がいるんで、もっと本読んでおいでね、とも思います(笑)

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人間がプログラミングをしなくても良い世界へ
? 100年先で使われるかもしれない理論

-酒井先生は、どのような目標に向かって研究を続けていますか?

プログラムは、「こんなプログラムがほしい」と言うと、例えば「おいしいご飯ができるプログラム」と言って材料を入れるとできるとか(笑)、自動的にできていくことが本当は理想ですが、完璧なものはほとんど無理だと理論的に証明されています。人間の知識を使いやっていくことに対し、一定のところを越えると、できないという結果に突き当たるのです。それでも、万能なものは無理でも特定の部分の9割はカバーできるとか、少しでも理想に近づけたいです。
何年かかるかわからないけれど、プログラミングということについて、人があまり関わらなくて済むようにしたいのです。理論というものは、証明されたらくつがえらないという側面がありますから、あとはいかに、全部は無理でも少しでも役立つものが期待できるかなのです。

何か入力に対して「Yes, No」が出るものを「問題」といい、その答えを必ず出すプログラムがつくれるという「決定可能性理論」というものがあります。「Yes, No」が100年かかっても必ず出るのであれば、決定可能な理論であると言えます。あとはスピードの問題です。でも、決定可能じゃないと証明ができたら、そんなプログラムはつくれませんよということなのです。

難しい問題というのは大体、できないことが証明されているのですが、全然役立たないわけではない。世界中の誰もまだわかっていない未解決問題がたくさんあり、例えば「P≠NP」というのは有名な問題です。皆が、これではと信じる答はあるのだけれど、証明ができない。証明にはこれまでにない斬新なアイデアがないと無理。いま私が挑んでいる未解決問題は書換え計算の性質の一つなんですけど、「解けた!」と持ってきても「これは去年私も同じように間違えました」なんてことは、よくあります(笑)。新しい考え方が導入され少しずつ進んではいるけれど、何かブレイクスルーを導入しないと解けないのです。でもそれはもしかしたら、50年前につくられた数学の結果が使えたり、そんなこともある。コンピュータができて60年になりますが、その頃の数学の結果が発掘され、それを使って進めようということもあるのです。私は100年後には生きていないですけど、一つでもそういうものが出せればと思っています。

興味の向くままにすきなことをしてきた

-酒井先生が、プログラミングと出会ったきっかけは?

高校の頃、一枚のボードにICがささったコンピュータの走り、「ワンボードコンピュータ」が流行り、プログラミングをしたいと思ったのです。少しでもプログラミングを楽にしようと、人間が書いたものをコンピュータにわかる言語の形に変換する「コンパイラ」の単純なものをつくっていました。コンパイラって昔は自動プログラムと言われていて、しかもつくるのが難しい職人芸だったんですが、いろんな理論が研究されてきて今では学生実験で作れるぐらいまでになっています。これがきっかけとなって現在の研究につながっています。

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わからないことにこそ、ゾクゾクしてほしい

-情報学部を目指す受験生へのメッセージをお願いします。

一通りの数学をやってきてほしいです(笑)高校でやった数学はあまり使いませんが、そこを楽しんで、わからない問題があったらゾクゾクしてもらえたら嬉しい。理論的なことであれば、学生には、やりたいことを研究してもらっているのですが、「ビルディングパズル」という、数独みたいなパズルゲームに関することをやりたいと言う学生がいたので、すきにさせました。パズルっていっても実は結構数学的なんですよ。解くのはもちろん、つくるのでもそう難しくないのですが、パズルとして成立させるには答えはひとつでないといけないんです。で、「パズルとして成立するヒント数はいくつが最小か?」を研究したんですが、これが結構複雑なんです。本人は頭抱えながらも楽しんでいましたよ。結局、部分的には解けたんですが、あと一歩のところで卒業してしまいました(笑)

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