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名古屋大学情報学部

スペシャルインタビュー

インタビューイメージ

情報は世界、人、自分を動かし、歴史は未来をつくる

井原 伸浩 准教授

【所属】大学院情報学研究科附属グローバルメディア研究センター
【担当】情報学部 人間・社会情報学科

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過去と現在との事例の比較から見えてくる、世界との接し方

-井原先生の研究について教えてください。

イメージ外交という、日本が国際的イメージをどう高めてきたかの研究をしています。歴史的アプローチをとっていて、分析対象は1970年代の東南アジアです。その頃の東南アジアでは、日本人は「エコノミックアニマル」と呼ばれ、非常に悪いイメージを持たれていました。日本は東南アジア諸国と貿易も密にして深いつきあいがあり、投資も援助もたくさんしていたにもかかわらずです。日本人は、現地の経済や開発を顧みず、儲け第一主義であるとみなされていたからなのですが、では、日本政府は一体どのようにこれを良い印象に改善していったのでしょうか。政治家のみならず官僚の取り組みや、日系企業がどのような活動をしていたのか、といったことも含め、研究しています。

国際政治、情報、メディア、文化、さまざまな角度から真実を見つめる

-その研究をするには、どんな知識や方法がありますか?

国際政治学はもちろんのこと、日本政府として「日本は現地の経済に非常に貢献していますよ」という情報発信もしましたので情報学、中でも国際情報学や情報政治学と呼ばれる分野がありますが、その知識も要るでしょう。日本のイメージ向上には広告も重要なツールでしたので、メディア研究も必要になってきます。さらに、文化協力や文化交流も手段として用いられていましたので、文化研究にも関わってきます。非常に学際的で、いろんな分野と重なるのです。より具体的には、主に当時の公文書を使用して、官僚や政治家はどんなことを考えていたか、政府はどんな試みをしていたのかを読み解いていくという手法をとっています。

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歴史から現在を知ることで、研究は拡大発展されていく

-井原先生の研究から、どんなことが見えてくるのですか?

歴史研究ですので、現代のことに直接的なつながりを見つけにくいのですが、現代のことを知るには歴史を知るのが近道なことも事実です。現在の東南アジアを調査してみると、日本人のイメージはとても良い水準にあります。1970年代からの、日本の印象を良くしていく試みが成功だったと考えられます。では、東南アジアでは日本のイメージが良くなったのに、なぜ韓国や中国とはうまくいかないのか、どうやったら過去の成功を韓国や中国との間で活かせるのか、と次の疑問が浮かびますよね。歴史を知ることで、現在や未来の諸問題まで考えられるように、研究が拡大発展する可能性を秘めているのです。

複雑に絡み合う歴史の発展と同じように、自分自身もつくられてきた

-今の研究をすることになった経緯はどのようなものですか?

国際政治の分野で研究を始め、修士論文のテーマは安全保障と、今とは関係無いものでした。博士論文はASEAN、東南アジア諸国連合の設立について書きました。その後、名古屋大学国際言語文化研究科のメディアプロフェッショナル論講座に所属したことにより、文化やメディアの研究に対する関心がいっそう深まりました。さらにグローバルメディア研究センター所属となってからは、センターが研究対象としている日本のイメージについて本格的に研究し始めました。自分の所属したところに適応しているうちに、今の研究テーマになったのです。つまり、今の研究は、最初から計算されたものではなく、偶然も手伝って取り組むようになったものです。さらに今後は情報学部の所属となりますので、きっとさらなる変化があるのだと思います。また、研究が好きになったのは、学部生の頃のゼミの先生がとてもフレンドリーだったことが大きいです。出会う人次第で自分の興味関心も変わったのです。それは、実は歴史研究の醍醐味とも言えます。歴史はすべて計算されたものではありません。偶然と必然、色々絡み合って、歴史は作られます。それと同じようなことが自分にも起きてきたのだと思います。

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色々なことを経験し、発信することで社会を変えよう - 情報学を学ぶことは、今に求められる人材であるということ

-情報学部を目指す受験生へのメッセージをお願いします。

もともと勉強は大嫌いで(笑)歴史も好きではありませんでした。ただ、外国に行きたくて、大学生の時には国際政治や文化を学んでいました。先ほども申しましたように、勉強嫌いはゼミの先生との出会いで大きく変わりましたし、研究者になった後は、所属する組織ごとに多様な情報へ触れる機会があって、自分の興味の対象も変わっていきました。大学ではぜひ、多様な人や知見に触れて、多くのことに関心を持てるようになっていただきたいです。

情報学部をめざす方は、理系にも文系にもまたがる、様々なことを学びたいという人が多いと思います。情報のデジタル化が進んでいますから、文系の学生も、情報に関わる理系の知識を持つ方が有利ですし、まさにそれが、現代に求められる人材ということでしょう。例えば、20年後にはもしかしたら会社というものがほとんど無くなっていて、個人で様々な仕事や成果を生み出せるようになるかもしれません。その時、理系の力、例えばプログラムを書く技術と、文系の、例えば国際情勢を読む力の両方があれば、大変な強みになるはずです。情報学部は、それを学べるところなので、学生の皆さんには頑張って欲しいです。

情報学部に入学されたら、講義の内容をただ聞いてインプットするだけではなく、アウトプットする方法も学んでほしいですね。先生が知的に見えるとしたら、それは、毎週必ず授業をして、自分の勉強したことをアウトプットしているからです。アウトプットすることは、自身の知識の定着にもなりますし、「この分野に関してはあの人に聞けば良い」という社会的信頼の向上にもつながります。もちろん、学生のみなさんは、インプットの努力、例えば、本も読んで旅もして、新しい経験をすることも大事です。情報は人を動かすことができますから、インプットした様々な知識をアウトプットすることにより、自分も、周囲の人も、世界中の人も変えることができるかもしれません。今はSNSで情報をどんどん発信できます。本当に世界中の、いろんな人を動かせるかもしれないのです。自分が世界を、社会を変える!何かしら貢献したい!という思いで学んでもらえたらと思います。

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