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名古屋大学情報学部

スペシャルインタビュー

インタビューイメージ

夢にも思わなかったことが実現する、奥深く拡がりのある学部

森 健策 教授

【所属】大学院情報学研究科 知能システム学専攻
【担当】情報学部 コンピュータ科学科

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自動的に病気を見つけてくれるシステム

-どんな研究をしているのですか?

CT(Computed Tomography:コンピュータ断層診断装置)やMRI(Magnetic Resonance Imaging:磁気共鳴画像診断装置)などの医用画像をコンピュータで処理する研究です。ガンやポリープを自動的に見つける装置をつくる、3Dプリンタで臓器のモデルをつくる、手術の時どこを切るべきか教えてくれるナビゲーションシステムをつくる、などがあります。最近は、顕微鏡CTと呼ばれるとても解像度の高いCTで撮影された画像の画像処理に関する研究を医学部の先生方と一緒に行っています.研究室にはよくお医者さんが来て、研究について議論されたりしています。私たちの専門分野だけではない、拡がりを持った研究がなされています。

専門知識と社会に及ぼす影響を同時に考えていく

-どんな知識、意識を持っておく必要がありますか?

まず数学、次にコンピュータの知識が必要です。画像処理のアルゴリズムやプログラムを開発し、医用画像から臓器のモデルを作るために必要な情報を取り出し、3Dプリンタでモデルをつくる方法までの開発、実際モデルを持ち込んでの手術の研究もしていますので、そういった知識も必要です。

ただ、今は、「コンピュータによる画像処理」だけでは研究が成立しにくくなっており、社会への影響も同時に考えることが求められています。例えば、臓器のモデルを使っての手術で考えると、実際に医療で使うには、薬事法や医療機器法という法律の認可をとらないといけない。さらに、この研究が広く使われるようになるまでには、薬機法に基づく国の認可を得て,さらに,健康保険で認められるようにしないといけない。と言うように、社会のしくみまで変えていかなければならないのです。単なる情報としてだけの知識ではなく、「今後どうなるだろう?」と考えながら研究することが重要です。学会で話を聞くなどして、そんな知識を身につけていくことも大事ですね。

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「カーナビの病院版!?」で、手術を補助する

-先生の考えや研究は、私たちとはどのように関わっているのでしょう?

お医者さんがCTで病気を見つける時、コンピュータが自動的に指摘してくれるシステムが使われています。実際、名古屋大学病院や愛知県がんセンターの先生と、手術ナビゲーションを行っています。おなかに内視鏡を入れ手術する場合、今どこを見ているのか、周りにどんな血管があるのか、内視鏡と連動し表示してくれるシステムなのですが、カーナビの病院版と思ってくれれば良いです。神経や血管が道路だとイメージしてみてください。CTの中から血管の情報が取り出されてくるのですが、CTが撮影した画像は白黒なので、コンピュータの中で動脈は赤、静脈は青、例えば肝臓は茶で膵臓は黄など画像処理し表示します。すると、カーナビの地図のような情報が出てきます。この技術でさまざまな患者さんの手術を助けています。

「面白い!」と「ありがとう」があるから、続けていける。

-先生はなぜ、この研究を志したのですか?

学部の研究紹介の本で研究内容を見て「面白い!」と直感しました。皆さんもこのパンフレットや動画を見て、将来どんな研究をするのか考えると思いますが、今後もっといろいろなことが現実化してくると思います。今、3Dプリンタでつくる肝臓モデルは固いですが、今後は柔らかいものが出てきて、さらに中にはディスプレイ的な、情報が表示されるようなデバイスの入ったものが開発されているでしょう。例えば「ここからここまで何センチ?」と何らかのジェスチャーをしたら、モデル内に数字で表示してくれるようなものをつくるのが課題ですが、SF映画的な話ですね(笑)。また、重みや湿り気、曲がるといった感触がリアルに近づくほど、良い研究ができると思います。メスで切って手術前にシミュレーションできるようなモデルは、一つの研究テーマになってくるでしょうね。材料系の先生や、機械系の人とのコラボレーションもいろいろ考えられ、さまざまな可能性を秘めています。

仲間がいて、お医者さんや患者さんから「ありがとう」をいただけるから、続けていけます。

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少しずつの進化が、さらなる研究分野を産み出していく

-情報学部を目指す受験生へのメッセージをお願いします。

情報学部はコンピュータを中心に、その周りにある社会的なものや技術的なもの、社会のさまざまな場面で役立つ学問を身につけられる場所です。実際、心理の先生との研究発表もしていますが、手術室でお医者さんが臓器モデルを持って手術する時どんな会話をし、状況はどうなっているか、といったことをすべての言葉から分析されています。研究は、本当に強いコラボレーションのもとに成り立っています。夢にも思わなかったことができるというのは、おそらく、一人だけでできることではなく、いろんな人がいろんなことをして、相乗効果として出来上がってくるということだと思います。情報学部は心理系、認知科学系の先生とも融合できる、非常に奥深い学部です。

私が学生だった頃「これで何ができるだろう?」と考えていたことが現実になってきました。同様に受験生の皆さんが成長するにつれて、さまざまなことが起きる可能性があります。それを楽しんでほしいです。

おそらく名古屋大学で一番拡がりをもっている学部ですので、ぜひ志してほしいです。

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