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名古屋大学情報学部

スペシャルインタビュー

インタビューイメージ

見たことのないものが見えるトキメキ マイクロナノの世界

張 賀東 准教授

【現所属】大学院情報科学研究科 複雑系科学専攻
【担当予定】情報学部 自然情報学科

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ハードディスクドライブのディスクとヘッドのすき間を1ナノメートルにする液体薄膜技術

-研究についてお話してください。

マイクロナノ領域における物理現象を解明し、新しい機能や性能をもつデバイスやシステムを創成する研究をしています。具体的には、固体表面における「液体薄膜」について、その特性を解明・制御する研究により、液体薄膜の流れ・濡れ・潤滑・摩擦などを利用する医療や精密機器産業分野の技術発展に貢献したいと考えています。

研究の応用例として、ハードディスクドライブ(以下、HDD)があります。インターネットの普及に伴い、高度情報化社会が実現してきました。その支えとなっているのはネットワーク上に蓄積している膨大な情報です。デジタル情報の約8割はHDDに蓄積されています。しかし、HDDを動作させるには一台あたり数ワットの電力を消費します。デジタル情報が急増している中、情報機器による消費電力は2025年で国内総発電量の20%に達すると予測されています。高度情報化社会の持続的発展には、HDDの省エネ化が必須と言えます。仮にHDD一台の記録容量が30倍になれば、30台必要だったものが1台ですみます。つまり、一枚のHDDにたくさんの情報を積めば、消費電力が減るのです。

HDDは主にディスクとヘッドから構成されていて、ディスクが手帳、データを読み書きするヘッドがペンに例えられます。現在、ディスクとヘッドのすき間は4nm(ナノメートル、1ナノメートルは10億分の1メートル)です。ディスクは小さな磁石の集まりでできていて、磁石の面積を小さくすると磁石の数が増えてHDDの記録容量を大きくすることできますが、磁石を小さくすると磁力が弱くなり、データの読み書きを可能にするためにはヘッドとのすき間をより小さくする必要があります。すき間を4nmから1nmに微小化すると記録容量は約30倍にできると考えられます。しかし一方で、ヘッドが時速100kmで高速回転しているディスクと接触して壊れてしまう危険性が増えてしまいます。このような危険性を避けるには、ヘッドとディスクをディスク表面に塗布している厚さ1nm程度の液体薄膜を挟んだ状態で動作させることが必須です。そのため、液体薄膜には耐久性、および低凝着、低摩擦の性能をもたせる必要があります。

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そこで、紫外線透過と非透過部分をもつマスクを介して液体薄膜に紫外線照射し、必要な特性を与えます。照射された部分は剥がれにくい強固な膜になりますが、されていない部分は液体の流動性を保ち、万が一剥がれた場合、そこに流動して修復機能を果たせます。このように2つの機能を両立させることで液体薄膜の耐久性を向上させました。しかも、液体表面なのに安定した凹凸を作ることに成功したのです。表面の凹凸によりヘッドとの接触面積が減少し,液体薄膜に低凝着・低摩擦性を与えることができました。

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融合させることで、新しい価値の創成がある

-どんな知識、意識を持っておく必要がありますか?

「情報」といえば、インターネット上にあるものを思いがちですが、自然情報の観点では物質の構造なども「情報」と捉えることができます。例えば、こんな構造があるからこういう機能があります、といえるので、「機能」に対して「構造」自体も「情報」と捉えることができるのです。自然情報学とは、社会現象のみならず、自然現象に含まれている情報も抽出し分析し、さらに融合したり組み合わせたりして新しい価値をつくり出す、という試みを意味します。

「融合する」ということはとても有効です。ある分野にとっては新しくないアイディアを別の分野に適用することで、新しい価値が産まれることもあります。自然情報学科では、多様な研究をしている研究者から話を聞けます。その環境を活かして、「融合」の土台となる広い視野と知識を積極的に身につけることがとても大事だと思います。

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見たことのないものを発見する面白さがある

-先生はなぜ、この研究を志したのですか?

旅行好きな人は多いと思いますが、見たことがないものを見たいというモチベーションが高いためだと思います。研究もそうです。マイクロナノの世界にいると、普段体験している世界と異なる夢の世界にいるようなトキメキがあり、私にはそれが魅力で、ずっと続けています。

もともと理系に進みたい、今の研究じゃなくても、研究をすること自体が面白い、と思っていました。誰も見たことのない物を発見したかった。なぜその現象が起きているのか、わからないことがたくさんあります。自分なりに考えて「こういう理由じゃないかな?」「あ、こういうことか!」と、見つけるということは楽しい。探していく過程がとても楽しいのです。

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問題に直面することは、新天地への扉を開くこと

-新設学部を目指す受験生へのメッセージをお願いします。

研究は問題解決のためにあります。こんな問題が解決されたらこんな未来がある、という意識を持ってください。でも、未来は現在の積み重ねです。未来を見据えて現在を行動することが大事なのだと思います。今の自分が理解できないこと、直面する問題は多いと思いますが、「この問題は新天地への扉!」と考え、勇敢に挑戦することが大切です。仮に失敗しても、学ぶことが必ずあるので、何もしないより得ですよ。「恐れないで!」と一番言いたいです。

名古屋大学が、女性研究者支援・育成の取り組みが評価され、英国のオックスフォード大学などとともに、国連女性機関から男女共同参画を推進する10大学に選ばれました。私自身の学生時代では、自分は未来を担うのだ、社会のため、その中の「一人」として責任を果たすのだと思っていました。性別に関係なくそのような責任感を持ってほしいです。また母親になった時、娘にもっと良い将来を築いてあげたいという気持ちが強くなりました。「私も、社会のために少しでも貢献したのよ」と、誇りに思いたい。皆さんにも自分に続く世代の人たちに対してそんな誇りを持ってほしいと思います。

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